コンプレックスをどのように克服するか


先日、経営者向けの国語レッスンで芥川龍之介の「鼻」を取り上げました。



主人公の内供(ないぐ)が自身の大きく長い鼻にコンプレックスを抱いていて、この鼻を人並みの大きさに変えようと苦心する話。



テーマは「コンプレックスとどのように付き合いながら生きるか」です。一読すると、内供の珍行が滑稽な話と捉えられますが、それは表面的な解釈であり正しく読み解いていません。実は奥が深く、人間がどんどんずるくなっていくロジックを描いたちょっと怖い作品になっています。



コンプレックスは私も持っています。右腿の前面にアザがあります。「それさえなければ」と考えたことは数多あります。しかし、コンプレックスばかりに執着してしまうと、周りが見えなくなり、被害者意識が強まりがち。これでは自分中心の思考になってしまい、人間関係に悪影響を及ぼしかねません。豊かな生き方とはかけ離れていくので、気をつけなければなりません。



内供は鼻を気にしすぎて、周りの人の言葉や態度に過敏に反応してしまいます。その一方、鼻を気にしていることを悟られたくないために弟子のアドバイスを素直に聞き入れません。コンプレックス中心の生き方になるまいとする行動が、かえってどんどんコンプレックス中心の生き方になっていきます。散々周りに迷惑をかけた挙句、最後はコンプレックスであった鼻に愛おしさを抱き本書は幕を閉じます。





ところで、先日こんな相談を受けました。



”家にいると勉強に集中できない”



受験生は勉強をしたくても勉強に集中できないことがあります。それがコンプレックスになるケースもよくあるようです。そんな時は、集中する方法を外に求めてばかりいないか振り返ってみましょう。集中できない理由は、案外自分の中に見つかるものです。悩みのもとは大概が、整理整頓・時間の使い方・人間関係のあり自分に原因があります。
そんな時は、一度時間をとって自分と向き合うことです。自己対峙は受験生の忍耐力を鍛えてくれます。



「鼻」の続編を作るとしたら、こんな話を想像してしまいます。内供が自分と対峙してコンプレックスを克服し、その克服法を同じ悩みを抱えている人に与えていく。
内供がなりたい将来像は、自分のことより他者のことを思う奉仕の精神ではないでしょうか。








2020/06/10 Category | blog 



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