『さぶ』を読む中学生たちの感想から見えてきたもの
まなび研究所が提供する「中学生のコンサルティング」の一環である『月イチBOOK』では、読後の振り返りとして感想フォームを用意しました。今回は、実際に「【月イチBOOK】4月の課題本感想フォーム」に寄せられた感想を読んで、私が思ったことを綴ってみました。
月イチBOOKとは
毎月1冊の文庫本や新書を読む読書習慣プログラムです。語彙力や表現力を高め、受験勉強や将来の力を育みます。
皆さんから寄せられた感想を読んでいると、山本周五郎の『さぶ』が中学生の心に深く響いていることが伝わってきます。この本から皆さんが感じ取ったことを、もう少し掘り下げてみましょう。
『さぶ』は単なる江戸時代の物語ではなく、人間の本質について考えさせてくれる作品です。特に印象的なのは「どんな人間だって一人で生きるもんじゃない」という寄場仲間の言葉。この一言に、物語の核心が表れています。
能力に恵まれた栄二と不器用ながらも誠実なさぶの対照的な関係は、私たちに大切なことを教えてくれます。栄二が無実の罪で人生のどん底に落ちたとき、彼を支えたのはさぶの無償の友情でした。「困難の中には機会が潜んでいる」というアインシュタインの言葉がありますが、栄二はその苦難を通じて、人との絆の大切さを学んでいくのです。
皆さんの感想には「さぶの生き方に感動した」という声が多く見られました。見返りを求めず、ただ友を信じ続けるさぶの姿勢は、現代社会でも変わらぬ価値があります。「思いやりとは、その人の心になっていくこと」—この感覚をさぶは体現しているのかもしれません。
現代の私たちの生活に置き換えてみると、「さぶ」の教えは様々な形で活きています。SNSやデジタルツールで表面的なつながりが増える一方、本当の意味での支え合いが希薄になっていないでしょうか。誰もが居場所を得られる社会、多様な個性を認め合う関係性—それは江戸の下町も現代も変わらない課題です。
音声ポッドキャストもお楽しみください♪
『さぶ』を読んだ中学生の皆さんには、ぜひ自分の周りの人々との関係を見つめ直してほしいと思います。誰かの「さぶ」になれていますか?また、誰かが自分の「さぶ」になってくれていることに気づいていますか?
読書は単なる知識の習得ではなく、心を磨く大切な時間です。5月の課題本も、皆さんの人生を豊かにする一冊となることを願っています。
2025/05/07 Category | blog
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