【5/13付】意見を育てるニュース教室:思考の制御力を養う

新年度が始まり、GWが明けて3週間ぶりに「意見を育てるニュース教室」の授業を再開しました。今回は新たに1名の生徒を迎え、10名での授業となりました。

私たちのニュース教室では、「読む」「考える」「表現する」という活動を通して、子どもたちが自分の意見を育てていく力を養っています。今回は特に「思考の制御力」を意識した授業を小川先生が展開してくれました。

他の視点から考える力

授業の最初に取り組んだのは、生徒たちが関心を持ったニュースについての意見交換です。指名した2名の生徒は、それぞれ「宮内庁YouTubeの一部有料化」と「120年謎だったパズルの解明」について発表しました。

興味深かったのは、どちらの生徒も記事をそのまま受け入れるのではなく、自分の視点で問いを立てていたことです。一人は「税金でまかなわれている活動をなぜ有料に?」と疑問を投げかけ、もう一人は「正解が明確でない問題を懸賞として出題することの是非」を考察していました。

こうした「別の角度から見てみる」という思考の柔軟さは、いわゆる“水平思考”の一部です。

「水平思考の制御力」とは?

思考の幅を広げる力としてよく知られる「水平思考」ですが、ただ自由にアイデアを出すだけでは十分ではありません。「このアイデアは今使える?」「他の考えとどうつながる?」といった判断も同時に必要になります。

こうした自由な発想を上手にコントロールする力が「水平思考の制御力」です。

この力が育つと、以下のようなメリットがあります

  • 発想のまとめ方が上手くなる
     → 自分の意見を筋道立てて話せるようになります。
  • 難しい問題にも柔軟に取り組める
     → 一つの道がダメでも、「別の考え方」を試せる子になります。
  • 他者の意見にも耳を傾けられる
     → 自分と違う考えにも価値を見いだせるようになります。
  • 作文や発表に説得力が増す
     → 多角的に考えた内容は、読み手・聞き手に強く伝わります。

今回の授業では、まさにこの「水平思考の制御力」を育てる工夫が随所にちりばめられていました。

思考を深めるための“読む力”と“枠組みの理解”

続くニュースクイズでは、「体育の授業での水泳を始めたきっかけと、最近廃止となっている理由」について出題しました。この問題は図解も含まれており、情報を読み取りながら因果関係を考える必要があります。ある生徒が即座に正答したのは、日頃のニュースへのアンテナと読み解く力の積み重ねがあってこそでした。

「矛盾」という言葉についての問いでは、ある生徒が中国の故事までふまえて説明してくれました。言葉の深い理解は、深い思考を可能にする——そんな私たちの信念が、生徒たちの中に着実に根付いていると感じられる場面でした。

「具体と抽象」の理解から、思考の整理へ

最後に取り組んだのは、「具体→抽象」への関係性を問う問題です。たとえば「リンゴ→くだもの」のように、モノとそれが属するグループの関係を考える課題ですが、「線路と電車」や「花と水」など一見つながっているようでも、抽象関係ではないものも混ぜて出題しました。

この課題のねらいは、直感に頼らず、決まった“思考のルール”に沿って答える力を育てることです。これはまさに、思考をただ広げるだけでなく、整理し、絞り込む力にもつながります。

思考の広がりは、意見を育てる土台になる

「逆さまに考えてみる。一方向だけで考えていると、必ず行き詰まります」
小川先生の授業報告によれば、今回の授業では生徒たちがまさにその「逆さまから見る思考=水平思考」を実践していました。

そして、広がった思考をルールに沿って整理し、自分の言葉として表現する——その繰り返しが、子どもたちの「意見を育てる力」の土台になっています。

生徒数が増えてきたことで、今後はグループ討議なども取り入れ、生徒同士が直接意見を交わす機会も増やしていく予定です。異なる視点に出会うことが、思考をさらに深くし、自分自身の意見を豊かに育ててくれるはずです。

子どもたちが自らの言葉で「伝えたい」と思う姿を見ることほど、教育者としての喜びはありません。次回もまた、知的好奇心に火を灯す授業を届けてまいります。

教室での子どもたちの様子を、ブログでご紹介しています。
どんなニュースに興味を持ち、どんなふうに意見を交わしているのか――
ぜひご覧いただけたら嬉しいです!


2025/05/15 Category | blog 



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