浜松西高中等部や静岡大学附属浜松中の入試:集団面接で本当に見られているもの

浜松西高中等部や静岡大学附属浜松中の入試。ペーパーテストを乗り越えた先にある、「面接」という関門。特に、6人から8人ほどで行われる「ディベート形式(問題解決型)」の集団面接と聞くと、親御さんの胸は、きっと静かにざわめいていることでしょう。

「うちの子は、人前でハキハキと話せるタイプではないから…」

「活発なお子さんたちの勢いに押されて、黙り込んでしまったらどうしよう」

「もし、トンチンカンなことを言って、議論を止めてしまったら…」

そんなご心配が、冬の冷たい空気のように心をよぎるのは、お子さんを想う親として、ごく自然なことです。

でも、少しだけ立ち止まって、深く呼吸をしてみてください。

私たちは、学校側がその「面接」という場で、いったい何をご覧になりたいのかを、静かに想像してみる必要があります。

それは、弁論大会のように、他者を論破するほどの雄弁さでしょうか。

それとも、生まれ持った才能で、議論をぐいぐいと引っ張っていくリーダーシップでしょうか。

もちろん、それらも素晴らしい力の一つです。

ですが、もしそれだけを測りたいのであれば、筆記試験の点数とあまり変わらないのかもしれません。

私が毎年、この入試に臨むお子さんたちと向き合い、その成長と本番の様子を見つめてきて感じるのは、評価される力、そして、これから先の世界で本当に必要とされる力は、もう少し違うところにあるのではないか、ということです。

それは、一見すると派手さのない、「静かな力」です。

たとえば、「聴く力」。

集団面接は、「話好き」な子が有利とは限りません。むしろ大切なのは、熱を帯びた議論の中で、他のお子さんが何を言わんとしているのか、その言葉の奥にある意図まで汲み取ろうとする、深い傾聴の姿勢です。

たとえば、「場を読む力」。

今、この議論はどこへ向かっているのか。自分に求められている役割は、リーダーなのか、サポートなのか、それともあえて違う視点を提示することなのか。その場の「空気」を読み、自分を客観視できる「メタ認知」の力 です。

そして何より、「自分の言葉で語る力」。

誰かの受け売りや、用意された模範解答ではありません。たとえ拙くとも、自分の頭で考え、感じたことを、誠実に伝えようとする意志。

これらは、ご家庭で日々大切にされてきた「しつけ」 や、食卓での何気ない「対話」の中で育まれてきた、そのお子さん自身の「原石」 とも言えるのではないでしょうか。

「でも、そんな難しい力、うちの子にあるかしら…」

そう不安に思われるかもしれませんね。

ご安心ください。これらの力は、生まれ持った性格だけで決まるものではありません。適切な「練習」によって、必ず磨き出すことができます。

私たちはこれを「型稽古」と呼んでいます。

入退室の仕方、お辞儀の角度、視線の配り方、手の挙げ方。まずは、そうした「型」を徹底的に体に染み込ませます。形が整うと、不思議と心も落ち着いてくるものです。

そして、何よりも大切なのが「場慣れ」です。

ご家庭では決して体験できない、本番さながらの緊張感の中で、仲間と意見を交わす経験。

私たちは、30もの異なるテーマを用意して、繰り返し繰り返し、話し合いの流れや結論の導き方を練習します。

最初は俯いてばかりいたお子さんが、ある日ふっと顔を上げ、仲間の意見に「私は、こう思う」と、静かですが芯のある声で返した瞬間。その姿を見るたび、私は胸が熱くなります。

以前、附属中の試験で、まさに私たちが練習していた課題が出たことがありました。

その子は試験の後、こんな風に話してくれました。

「練習済みだったので驚きましたが、もうみんなで話し合った内容だったので、余裕を持って、本番ではもっと良い意見を出すことができました」。

でも、お伝えしたいのは、予想が当たることが重要なのではない、ということです。

たとえどんなお題が出されたとしても、「あ、この流れ、練習でやったな」と冷静に対応できる「読解力」 と「胆力」が身につくこと。

それが、「練習」がくれる、一番大きな贈り物なのです。

面接は「答えを教わる場」ではありません。

お子さん自身が、自分の中に眠っている力を発見し、それを「自分の言葉」で表現できるようになるための「道場」のようなもの。

親御さんにできることは、何でしょう。

それはきっと、結果がどうであれ、挑戦したお子さんをまるごと受け止めるという「無償の愛情」 で、どっしりと構えて見守ってあげること。

お子さんが本来持っている、その温かく、しなやかな力を、信じてみませんか。

私たちは、その力が本番で豊かに花開くよう、そっと背中を押させていただくだけです。

面接本番、お子さんが自分らしく、堂々とその場に座っている姿を、一緒に想像してみましょう。

きっと、大丈夫ですよ。


2025/11/17 Category | blog 



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