静岡県公立高校入試のルール下で勝たせなければならない葛藤

理不尽なシステムだとわかっていても、目の前には「受験」という現実がそびえ立っています。

静岡県の固定化された入試制度や、内申点に縛られ、常に大人の評価を気にして過ごさなければならない学校生活。明日突然、この県の教育環境が劇的に変わるわけではありません。

では、この「変わらない箱」の中で、私たちの大切なお子さんは、どうやって学校や勉強と付き合っていけばいいのでしょうか。


私は日々、教室で子どもたちと向き合いながら、強烈な葛藤を抱えています。

「こんな型通りの暗記や、ミスをしないためだけの訓練なんて、彼らの豊かな将来にどれほどの意味があるのだろうか」と本音では思いながらも、彼らが望む浜松北高や静岡高校、浜松西高中等部といった素晴らしい環境へ送り出すためには、現実としてこのルールの下で勝たせなければならない。

矛盾していますよね。教える側としての苦しさが、常に私の中にはあります。

しかし、ある時、一人の生徒の姿が私に一つの確かな答えをくれました。

彼は当初、定期テストの点数や内申点の1点、2点に一喜一憂し、常に何かに怯えているようでした。学校の先生の顔色をうかがい、「減点されないための無難な答え」を探す日々。その息苦しさに、彼の本来持っていた好奇心の輝きは失われかけていました。

そこで私は、あえて目先のテスト対策から一度離れる決断をしました。

彼に、ひたすら「国語読解トレーニング」だけすることをアドバイスしたのです。

国語の長文だけでなく、自然科学の原理原則、歴史のダイナミズム、哲学の問い。文章の骨組みを捉え、筆者の意図という「構造」を理解し、膨大な情報を論理的に処理するトレーニングです。

自然の法則や原理原則に触れることは、物事の「本質」を見極める目を養うことでもあります。

数ヶ月後、彼の中で劇的な変化が起きました。

「先生、静岡県の入試問題って、結局はこういう『型』で聞きたいだけなんですね。なんだか、出題者の意図が透けて見えます」

彼がそう笑って言った日のことを、私は一生忘れません。

本質的な読解力と構造理解を手に入れた彼にとって、あれほど恐れていた入試問題や学校のテストは、ただの「シンプルなルールのゲーム」へと変わったのです。

私はこう思うのです。

学校や受験というシステムに、真正面から「適応」しようとすると、子どもは苦しくなります。自分を押し殺し、枠にはまろうとするからです。

そうではなく、システムを上から「俯瞰(ふかん)」する力を育ててあげたい。

原理原則を知り、物事の成り立ちを深く理解する「地頭」があれば、どんな理不尽なテストでも、余裕を持ってクリアしていくことができます。テストの枠に自分を押し込めるのではなく、自分の大きな知性の器の中に、テストという小さな箱を取り込んでしまう感覚です。これはこの先、社会に出てからも役に立つ一生モノの思考法です。


親御さんも、お子さんの成績表やテストの点数を見ると、どうしても心がざわついてしまうことがあると思います。

「このままで大丈夫かしら」「もっとやらせなきゃいけないのでは」と。

それは、お子さんを深く愛し、痛いほど未来を案じているからこその、とても自然な感情です。私はその不安に、どこまでも寄り添いたいと思っています。

ですが、ほんの少しだけ視点を変えて、点数という「結果」の裏側にある、お子さんの「思考のプロセス」に目を向けてみませんか。

「なぜ、ここで迷ったんだろう」

「この間違いは、どんな面白い勘違いから生まれたんだろう」

そうやって、お子さんの思考の軌跡を一緒に辿り、その不器用なプロセスごと愛おしく面白がることができたなら。お子さんはどれほどの安心感に包まれるでしょうか。

評価されるためだけの勉強から、世界を解き明かすための学びへ。

私は、その架け橋となるのが「本を読む」という行為だと確信しています。

活字を通して、時代を超えた先人たちの知恵に触れ、自分の頭で論理を組み立てる。その静かで深い時間は、お子さんの根っこに、どんな嵐にも折れない太い幹を育ててくれます。情報処理のスピードや構造把握の力は、受験を突破する最強の武器になるだけでなく、その後の人生を支え続ける土台となるのです。私は、一人でも多くのお子さんと親御さんに「本を読む」という行為がもたらす壮大なパワーを実感してほしいのです。


今の学校や受験のあり方が、すぐには理想通りにならなくても。お子さん自身の内側に、豊かで揺るぎない知性の海を広げることは、今日からでもできます。

お子さんが机に向かうその後ろ姿に、どんな声をかけ、どんなまなざしを注ぐか。 点数ではなく、その子の内側で起きている成長の静かな音に耳を澄ませてみませんか。これが始まったAI時代の親子関係です。


2026/03/07 Category | blog 



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