【全国公立高校入試2025】生成AI時代の国語入試:もう「答えを覚える」勉強では通用しない

山梨県で起きた「衝撃的な問題」

2025年度の高校入試で、教育界がざわめいた問題があります。山梨県の国語で出題された、こんな問題です。

「生成AIが答えた内容を読み、間違っている部分や不十分な部分を見つけて、元の文章に戻って正しい理解を深めなさい」

これまでの入試問題とは、まったく違います。正解が用意されているのではなく、AIの「間違った答え」から出発して、自分で考えて正解にたどり着く問題なのです。

他県でも続々と「考えさせる」問題が登場

福井県では、文章の途中に図表が挿入され、その空欄を文章と図表の両方を見ながら埋める問題が出ました。

宮崎県では、教師がいない場面で生徒同士が文章について話し合い、その中で出た新しい視点を基に読みを深める問題が出題されています。

どの問題にも共通しているのは、「一つの答えを暗記していれば解ける」時代が終わったということです。

なぜ今、この変化が起きているのか

理由は明確です。お子さんが大人になる頃には、AIが瞬時に「正解らしき答え」を出してくれる時代になっている。でも、その答えが本当に正しいのか、自分の状況に適しているのかを判断できなければ、AIに振り回される人生になってしまいます。

フランスの哲学者ヴォルテールは「疑うことは不快で困難だが、確信することは滑稽である」と言いました。AIの時代だからこそ、与えられた情報を疑い、自分で考え抜く力が、お子さんの将来を左右するのです。

我が子は大丈夫?チェックしてみてください

お子さんに、こんな質問をしてみてください:

「ChatGPTに『なぜ勉強しなければいけないの?』と聞いたら、こう答えた。この答えについて、君はどう思う?」

もしお子さんが「AIが言ってるから正しい」と答えたら、要注意です。AIの答えを疑わずに受け入れる癖がついてしまっています。

逆に「でも、本当にそうかな?」「僕の場合は違うかも」と言えるお子さんなら、新しい入試にも対応できる思考力が育っています。

親として、今何ができるのか

1. 「調べたこと」を鵜呑みにしない習慣を作る

お子さんがスマホで何かを調べたとき、「へえ、そうなんだ。でも他の情報も見てみよう」と一緒に検証してみてください。一つの情報源だけで満足しない習慣が、入試で求められる「批判的思考力」を育てます。

2. 「なぜそう思うの?」を口癖にする

お子さんが何かを主張したとき、すぐに正解を教えるのではなく、「なぜそう思うの?」「他にも考え方があるかな?」と問いかけてみてください。考えるプロセス自体が、新しい入試で求められる力そのものです。

3. ニュースについて「対話」する

晩ご飯のときに、その日のニュースについて話してみてください。「このニュース、本当かな?」「他の見方もあるんじゃない?」と、家族で議論する時間を作ってみてください。

実は、これは「生きる力」そのもの

新しい入試が求めているのは、結局のところ「自分で考える力」です。これは入試のためだけではありません。

お子さんが就職するとき、結婚相手を選ぶとき、家を買うとき、人生のあらゆる場面で「与えられた情報を疑い、自分で判断する力」が必要になります。

危機感を持ちつつ、希望を持って

正直に言います。従来の「問題集を解いて、答えを覚える」勉強法では、もう通用しません。でも、逆に言えば、思考力を鍛える勉強をしているお子さんにとっては、大きなチャンスの時代でもあります。

「うちの子は大丈夫かしら?」という不安を感じるのは、とても自然なことです。でも、その不安を感じたからこそ、今日からでも始められることがあります。

お子さんと一緒に「考える時間」を作ってみてください。

例えば:

「今日のニュース検証タイム」(10分間) 夕食時に一つのニュースを取り上げて、「このニュース、本当にそうかな?」「他の見方もあるんじゃない?」と話し合ってみる。

「ChatGPT質問大会」(週1回) お子さんが疑問に思ったことをChatGPTに聞いて、その答えについて「本当かな?」「うちの場合はどうだろう?」と親子で検証してみる。

「なぜなぜ攻撃」(日常会話で) お子さんが「○○だと思う」と言ったら、「なぜそう思うの?」「他にも理由があるかな?」と、とことん理由を聞いてみる。答えられなくても大丈夫、考えることが大切。

「反対意見タイム」(月1回) 家族の誰かが意見を言ったら、あえて反対の立場から考えてみる遊び。「お父さんの意見も分かるけど、こんな見方もあるよね」と、多角的に物事を見る練習。

それが、AI時代を生き抜く力の第一歩になるはずです。

実際の入試問題を見てください:時代は確実に変わっています

最後に、冒頭で取り上げた実際に出題された問題をご紹介します。お子さんが解けるかどうか、一緒に考えてみてください。

【山梨県 2025年度入試問題より】

次の文章「コミュニケーションの本質について」を読んだ後、太郎くんが生成AIに質問をしました。AIの回答を読んで、問いに答えなさい。

【太郎くんの質問】 「この文章で筆者が最も伝えたいことは何ですか?」

【生成AIの回答】 「筆者が最も伝えたいのは、コミュニケーションは言葉だけでなく、相手の気持ちを理解することが大切だということです。特に、現代社会では技術が発達して便利になりましたが、人と人との心の繋がりを忘れてはいけません。」

問:この生成AIの回答には、誤っている部分や不十分な部分があります。元の文章に戻って内容を確認し、より適切な回答に修正しなさい。また、なぜその修正が必要なのか、理由も説明しなさい。


いかがでしょうか。従来なら「筆者の最も言いたいことを答えなさい」で終わりでした。でも今は、AIの答えの間違いを見つけて、自分で正しい答えを作り直す問題が出ているのです。

これが、お子さんが受ける入試の現実です。

もう「正解を覚えて書けば点がもらえる」時代ではありません。AIが出した答えを疑い、検証し、自分の頭で考え直す力が求められています。

この変化を「大変だ」と思うか、「面白い時代になった」と思うかは、親御さん次第です。でも確実に言えるのは、今日から始める「考える習慣」が、お子さんの未来を大きく変えるということです。


2025/06/18 Category | blog 



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