【何のための中学受験なのか Ep.6】親にできる、たった一つの、でも最も大切なこと。

お子さんの成績が思うように伸びないとき、私たちはつい、もっと何かしてあげなければ、と焦ってしまいますよね。

もっと細かくスケジュールを管理した方がいいのかしら。

もっと問題の解き方を教え込んだ方がいいのかしら、と。

そのお気持ち、よく分かります。愛するわが子のために、何かせずにはいられないのが、親というものですから。

でも、もし。

もし、私たち親が本当にすべき役割が、ほんの少し違う場所にあるとしたら、どうでしょう。

私たちは、お子さんの勉強を細かく管理する現場監督(マイクロマネージャー)ではなく、お子さんが安心して学び、のびのびと育つ家を設計する「建築家」のような存在なのかもしれません。大切なのは、関与の「量」ではなく、その「質」なのです。

Z会 イマドキ中学受験情報 中学生Z会員の保護者に聞いた!中学受験アンケート調査が、その「質の高い関わり」とは何かを、そっと教えてくれています。

それによると、お子さんの学力と強い関係があったのは、「算数の問題を一緒に解いてあげる」こと以上に、「今日あったニュースについて、『あなたはどう思う?』と話をする」ことだったり、「一緒に図書館へ出かける」ことだったりしたのです。

つまり、知的な好奇心の土に、そっと水をやり、太陽の光を当ててあげること。家庭がそんな温かい場所にさえなっていれば、学ぶ力は自然と育っていく、ということです。

そして、この調査は、もっと胸が温かくなるような、大切なことも明らかにしています。

お子さんの自己肯定感や、やり抜く力といった「心のたくましさ」と、とりわけ強い関係があった親の行動。それは、「お子さんの良いところを見つけて、言葉にして褒めてあげること」。

そして、もう一つ。「お子さんのお友達の名前を、たくさん知っていること」でした。

お友達の名前。

一見、受験とは何の関係もないように思えますよね。

でも、「今日、〇〇くんは元気だった?」という、その何気ない一言が、どれほどお子さんの心を温めるか、想像してみてください。

それは、「ママ(パパ)は、勉強している僕だけじゃなく、学校で友達と笑っている『素の僕』のことも、ちゃんと見て、丸ごと受け入れてくれているんだ」という、何より力強いメッセージになるのです。

この安心感こそが、お子さんの心を育む、ふかふかの土壌となります。

この土壌があるからこそ、子どもは失敗を恐れずに新しいことに挑戦したり、困難な状況でも「自分なら大丈夫」と立ち直ったりする力(レジリエンス)を育てていけるのです。

私たちの役割は、お子さんを管理し、コントロールすることではありません。

そうではなく、お子さんが疲れて帰ってきたときに「おかえり」と迎える温かいリビングを用意すること。その手の中に、そっと夜食のおにぎりを握らせてあげるような、生活の土台を支える役に徹することなのかもしれません。

勉強の進捗を問いただすよりも、大切なわが子の「一人の人間としての世界」に関心を持ち、その存在をまるごと肯定してあげること。

それは、特別な知識も、高い学歴も必要ありません。

どんな親御さんにもできる、たった一つの、でも、最も大切なこと。

中学受験の成否を分ける鍵は、案外、そんな温かい場所にあるのではないでしょうか。


2025/09/18 Category | blog 



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