あなたにとって、人生の『宝物』となった一冊はありますか。
少しだけ、昔のことを思い出してみていただけませんか。
あなたにとって、人生の「宝物」になった一冊はありますか。
すぐに思い浮かばなくても、大丈夫です。慌ただしい毎日の中で、そんなことを考える時間もなかったかもしれませんね。本棚の奥で静かに埃をかぶっているかもしれないその一冊が、かつてのあなたの心を揺さぶり、今のあなたを形作る、ひとかけらになったのかもしれません。
私にも、そんな一冊があります。
塾の仕事がまだ軌道に乗る前、深夜の古本屋で、私は偶然ある本を手に取りました。なぜその本に手が伸びたのか、今となっては思い出せません。ただ、その本に書かれていた言葉の数々が、当時の私の心に、まるで乾いた大地に染み込む水のように、深く、深く、浸透していったのです。
『船井論語』というその本は、単なるビジネス書ではありませんでした。そこには、仕事との向き合い方、人との関わり方、そして、どう生きるべきかという、普遍的な哲学が息づいていたのです。雷に打たれたような衝撃、とはこのことでしょう。私はその本を抱きしめるようにして家に帰り、夢中で読みふけりました。
そして、ただ読んで終わりにはしませんでした。そこに書かれていることを、一つ、また一つと、不器用ながらも実践していきました。その先に生まれたのが、この「まなび研究所」です。あの一冊との出会いがなければ、今の私はここにいません。大袈裟に聞こえるかもしれませんが、あの夜、古本屋で手にした一冊が、私の人生そのものを創り上げてくれた、かけがえのない「宝物」なのです。
本を読むという行為は、不思議な力を持っています。
手軽に見られる動画のように、BGMになったりはしません。倍速で情報を流し込むこともできません。静かな場所で、ページをめくり、言葉の海に深く潜っていく。それは、自分自身と向き合い、著者と静かに対話する、濃密な時間です。だからこそ、そこで得た言葉や物語は、ただの知識として頭に残るのではなく、身体に、心に、じわりと染み込んでいく。そして、いつしか自分の血肉となり、価値観となり、困難な道に迷った時の、足元を照らす灯りとなるのです。
あなたが「宝物」だと感じた一冊は、どんな物語を、どんな言葉を、あなたに語りかけてくれましたか。
そして、これから人生という長い旅路を歩むお子さんの本棚に、私たちはどんな世界をそっと置いてあげられるでしょうか。
もちろん、これを読みなさい、と押し付ける必要はありません。ただ、親である私たちが、一冊の本を心から慈しみ、その本との出会いを大切にしている姿を見せること。それだけで、お子さんの心に、本への好奇心という小さな種がまかれるのかもしれません。
いつか、あなたにとっての「宝物」の一冊について、そして、お子さんが夢中になっている一冊について、お話を聞かせてもらえる日を、心から楽しみにしています。その一冊が、あなたの、そしてお子さんの人生を、どのように彩ってきたのか。そんな物語に、そっと耳を傾けさせてください。
2025/10/14 Category | blog
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