中学生、力を出し切るために。テスト直前、あえて「やらない」と決める勇気。
11月。今日は日中こそ気温が上がりましたが、夕方からは空気がピンと張り詰めてきましたね。 中学3年生にとっては、内申点に関わる大切な定期テスト。他の学年のお子さんにとっても、これまでの学習の成果が問われる大事な時期です。
夜遅くまで机に向かうお子さんの背中。 「頑張れ」と声をかけたいけれど、なんと声をかければいいか迷う親御さんの、少しハラハラしたような、もどかしいようなお気持ち。 そんなご家庭の光景が目に浮かびます。
お子さんたちは、本当によく頑張っています。 その積み重ねてきた努力を、本番で余すことなく発揮させてあげたい。それは親御さんも、私たち指導者も、同じ願いです。
「最後の追い込みだ!」と、私たちはつい、何か新しいことを「足す」ことに意識が向きがちです。 でも、本番で最高のパフォーマンスを発揮するために、この時期、あえて「やらない」と決める勇気が必要なこともあるのかもしれません。
1. 新しい問題集に、手を伸ばしていませんか?
テスト直前になると、本屋さんで真新しい参考書や問題集が輝いて見えることがあります。「あれも、これも、まだやっていない」と、急に不安が押し寄せてくる。
かつて、私が指導していたA君がそうでした。テストの2日前、不安に駆られて新しいドリルを買ってきたのです。しかし、開いてみると解けない問題がいくつもあり、彼はすっかり自信を失ってしまいました。「自分はまだ何もわかっていなかったんだ」と。
これは、とてももったいないことです。 直前に詰め込んだ知識は、なかなか定着しづらいもの。それ以上に、「解けない」という経験が、今まで築き上げてきた自信という土台を、ガラガラと崩してしまう危険があるのです。
最小の努力で最大の結果を出す「レバレッジ」 という視点で考えても、本番直前に自信を失うコストは、計り知れません。
今、お子さんの手元にある、使い込まれてボロボロになったノートや問題集。それこそが、これまでの努力の証であり、本番で力をくれる一番のお守りではないでしょうか。
2. 難しい問題ばかりに、時間を奪われていませんか?
「応用問題ができなければ、高得点は望めない」 その焦りから、基礎的な確認をおろそかにして、難しい問題ばかりに時間を費やしていないでしょうか。
もちろん、挑戦は大切です。 しかし、難問は解くのに時間がかかる割に、得られるものが少ないこともあります。その時間があれば、確実に解けるはずの基礎問題を、もう一度見直すことができたかもしれません。
テストで本当に点数を支えてくれるのは、難しい1問よりも、確実に正解できるはずの基本的な問題の積み重ねです。学習効率 という観点からも、今一度、足元を見つめ直すことが大切かもしれませんね。
3. 「眠らない」ことを、頑張りの証にしていませんか?
そして、私が一番心配しているのが「徹夜」です。
「最後の追い込みだから」 「寝る時間も惜しい」
その気持ちは痛いほどわかります。でも、どうか、お子さんに「しっかり寝る」という大切な仕事をさせてあげてください。
私たちの脳は、寝ている間に、日中学んだ情報を整理し、記憶として定着させる「セーブ」作業を行っています。 徹夜をするということは、せっかく学んだことを「セーブ」せずに電源を切ってしまうようなもの。脳が疲弊し、酔っ払ったような状態で本番に臨むことになりかねません。普段なら絶対にしないような、思わぬミスを誘発してしまうこともあります。
「3時間睡眠で乗り切った」というような話を聞くこともありますが、それはとても危険な賭けです。 本番でクリアな頭を保ち、思考力や判断力を最大限に発揮するためには、十分な睡眠が不可欠です。
これは、心と身体のコンディションを整える「自己管理」 の領域。お子さんが自分の力を100%発揮するための、最も重要な戦略の一つです。
テスト直前期は、新しいことを「足す」ことよりも、今ある力を「守り、研ぎ澄ます」ことが、最大の「攻め」になることがあります。
親御さんにできることは、もしかしたら、「もう勉強したの?」と声をかけることではなく、お子さんが「やらない」勇気を持てるよう、「大丈夫、今までやってきたじゃない」と、安心できる居場所を作ってあげることかもしれません。
私たちは、目先の点数だけを追いかけるのではなく、お子さん自身が考え、判断し 、自分の力を発揮していく「本当の強さ」を育むお手伝いをしたいと願っています 。
もし、ご家庭の中だけで不安が抱えきれなくなった時は、どうぞお気軽にいらしてください。 私たちは、そういう時のために、ここにいますから。
2025/11/10 Category | blog
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