【7/1付】意見を育てるニュース教室:つい口出ししてしまう親へ~子どもの『違う答え』が教えてくれた大切なこと

今週の小川先生の「意見を育てるニュース教室」で、とても印象深い出来事がありました。

作文のまちがいさがしの問題で、生徒たちに次のような課題を出したそうです。

【問題文】 「バスにはバス停があり、いつでもどこでも、乗れるわけではないので、不自由である。それに対して、タクシーにはバス停がなく、どこでも乗ったり降りたりできるので自由である。だから、バスよりもタクシーのほうが、自由に乗り降りできる乗り物だと言える。」

この文章の観点をそろえて、論理的に直すという課題です。

多くの生徒が「バスにはバス停があり、タクシーにはバス停がなく」という部分のおかしさには気づいても、どう直せばいいか悩んでいました。そこで先生が「バスもタクシーも何をするもの?」とヒントを出すと、「乗り物が出発したり、着いたりするところは?」という流れで「停留所」「発着場」といった抽象化した答えにたどり着いたそうです。

でも、一番驚いたのは、助言を受けなかったチームの答えでした。

「バスには時刻表があり、いつでも乗り降りできないので不自由である。それに対して、タクシーには時刻表がなく、いつでも乗り降りできるので自由である。だから、バスよりもタクシーのほうが、便利な乗り物だと言える」

出題者の意図とは全く違う答えでした。でも、この解答は論理的で、しかもとてもシンプル。「バス停」を「時刻表」に変えて、観点を「時間」という一点に絞って統一したんです。わずか6分という短時間で、この答えを導き出したのです。

小川先生は「よかれと思い、つい助言してしまうことが、逆に彼らの邪魔をしてしまう恐れがある」と振り返っています。

これを読んで、思い出したのは教育哲学者ルソーの言葉です。「子どもは自然に学ぶ。大人はただ、その邪魔をしないことが大切だ」。

私たち大人は、どうしても「正解」を知っているつもりになって、子どもに道筋を示そうとしてしまいます。でも、子どもの頭の中では、私たちが想像もしない創造的な思考が働いているんですね。

先日、お母さんからこんな相談を受けました。「うちの子は宿題をやっている時、私が見ていると手が止まってしまうんです。でも、一人でやらせると、変な解き方をしてしまって…」

その時、今回のニュース教室の話を思い出しました。もしかすると、その「変な解き方」こそが、お子さんの独創性の表れかもしれません。

大切なのは、子どもが考えている時間を「待つ」こと。答えが出るまで、じっと見守ること。たとえその答えが私たちの想定と違っていても、まずは「どうしてその答えになったの?」と聞いてみること。

子どもの思考プロセスを理解しようとする姿勢が、実は一番の教育なのかもしれません。

「つい口出ししてしまう」「答えを教えてあげたくなる」という親心はよく分かります。でも、時には一歩引いて、子どもの可能性を信じて待ってみる。そんな時間が、お子さんの創造性を育んでいくのだと思います。


2025/07/03 Category | blog 



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