その対策、未来につながっていますか? 浜松西高中等部「適性検査」が本当に見ている力

今は夏休みの真っ只中。「算数の勉強はした」「国語の読解もやった」「理科も社会も覚えた」。一つひとつの教科を、まるでスタンプラリーのように、一生懸命に埋めていくお子さんの姿。その隣で、「これで大丈夫だろうか」という期待と、拭いきれない不安が入り混じる夜を過ごされているかもしれません。

特に浜松西高中等部を目指す親御さんから、「対策が難しい」というお声をよく耳にします。それもそのはずです。浜松西高中等部の「適性検査」は、私たちが慣れ親しんだ「教科ごとのテスト」とは、少し佇まいが違うのですから。

それは、算数、国語、理科、社会といった教科の知識を、パズルのピースのようにバラバラに問うものではありません。むしろ、それらのピースを自由自在に組み合わせ、一つの大きな絵を完成させる能力を問うています。

中でも、多くのお子さんが試験後に「できた気がしない」と呟くのが、「総合適性検査問題Ⅱ」で出題される理数系の読解問題です。 無力感に似たその感覚の正体は、一体何なのでしょうか。

実は、これらの問題の核心は、計算の速さや正確さではありません。その本質は、どこまでも「読解力」にあります。長く、複雑な文章やデータの中から、「そもそも何を起点に考え始めれば良いのか」を読み解く力。それはもはや「算数の問題」という名の服を着た、「高度な読解と思考の問題」と呼ぶべきものなのです。

この複雑なテストの背後には、浜松西の未来を見据えた、静かで強い教育哲学が透けて見えます。

考えてみてほしいのです。将来、お子さまが研究者になったとき、社会起業家になったとき、あるいは未知の分野を切り拓く専門家になったとき。目の前にある課題は、「はい、これは数学の問題ですよ」と書かれているでしょうか。いいえ、現実の世界の課題は、膨大な資料を読み解き(読解力)、重要な情報を整理し(条件整理)、解決策のモデルを立て(図解・数理モデル化)、論理的に説明する(記述力)という、まさに教科横断的な力によって解決されていくはずです。

浜松西高中等部は、そうした複雑な未来社会で活躍できる、しなやかで強靭な思考力を持った生徒を求めている。適性検査は、そのための「挑戦状」なのかもしれません。

私たちは、お子さんの勉強を見るとき、つい「ドリルを何ページやったか」「単語をいくつ覚えたか」という目に見える「量」に安堵してしまいがちです。しかし、お子さんの学びは、バラバラの知識をただ集める作業になってはいないでしょうか。

一つの知識と別の知識を、自分の頭の中でつなげて遊んでみる。長い文章と出会ったとき、うんうんと唸りながら、その構造を解き明かそうと格闘してみる。そんな、目には見えないけれど、知的でわくわくするような挑戦の時間を、お子さんは持てているでしょうか。

浜松西高中等部の適性検査という挑戦は、私たち親に対しても、一つの大切な問いを投げかけているように思うのです。「お子さんの今の学びは、5年後、10年後の未来で、本当に輝く力につながっていますか」と。


2025/08/07 Category | blog 



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