【9/9付】意見を育てるニュース教室:「もっとこうだったらいいのに」その言葉、聞き逃していませんか?

先週の 意見を育てるニュース教室 で、子どもたちの心の中に芽生えた「問い」が、どんな花を咲かせるのか楽しみだと書きました。その発表会が、先日、教室で行われました。一枚の新聞記事から始まった子どもたちの思索が、どこにたどり着いたのか。今日は、そのご報告をさせてください。

教室の空気は、静かな熱気と、少しの緊張感、そして大きな誇りに満ちていました。子どもたちが持ち寄ったのは、単なる思いつきではありません。色鮮やかなデザイン画が添えられたものもあり、一つひとつのアイデアが、彼らの頭の中でどれほど大切に温められてきたかが伝わってきます。

ある子は、動物の思考をAIで解析し、声なき声に耳を傾け、その命を救いたいと語ってくれました。またある子は、ケガや障害でうまくコミュニケーションが取れない人のために、頭で考えたことがそのまま文字になるシステムを考えました。食品ロスをなくすための賢いポイントシステム、地球温暖化を防ぐための家庭用酸素発生装置、虫刺されや花粉症といった日常の小さな悩みに寄り添う発明……。

提出されたアイデアの数々を前に、私は胸が熱くなるのを抑えることができませんでした。子どもたちの視線が、自分のことだけでなく、すぐ隣にいる誰かへ、社会へ、そしてこの地球全体へと、驚くほど広く、深く、優しく向けられていたからです。

これらの素晴らしいアイデアは、一体どこから生まれたのだと思いますか?

授業を担当した小川先生が、「アイデアのヒントはどこにあったの?」と子どもたちに尋ねたそうです。すると、多くの生徒がこう答えたと言います。

「自分が困っていること、誰かが困っていること、から考えました」と。

「不便」「不満」「不安」、そして「理不尽」。

私たちは普段、こうした感情をネガティブなものとして、できれば感じたくないものとして捉えがちです。ですが、この子どもたちの言葉を聞いて、私はハッとさせられました。もしかしたら、これらの感情こそが、世界をより良くするための、最も力強いエンジンの燃料になるのではないでしょうか。

私たちはつい、お子さんに「文句を言わないの」「我慢しなさい」と口にしてしまうことがあります。もちろん、社会の中で生きていく上で、折り合いをつける力は必要です。けれど、お子さんが口にする「なんでこうなってるの?」「もっとこうだったらいいのに」という言葉の奥に、世界をより良くしたいという純粋な願いの原石が隠れているとしたら。私たちは、その小さなつぶやきに、どれだけ耳を傾けているでしょうか。

「歯磨き粉が最後まで使いきれない。もったいないな」という日常の小さな「不満」。それが、ゴミ削減という地球規模の課題へと繋がっていく。

「お母さんが毎日掃除で大変そうだな」という家族への優しい眼差し。それが、花粉症や感染症からみんなを守る発明へと繋がっていく。

お子さんの心に宿る「許せない」と感じる気持ちや、「こうあったらいいのに」と願う切実な思いこそが、未来を創るための、何よりも尊い出発点なのかもしれません。

今回の授業は、子どもたちが自分たちの内なる「優しさ」や「正義感」が、未来を形作る具体的な力になるのだと実感する、素晴らしい機会になったと感じています。

お子さんが抱える「不満」や「もどかしさ」。

それは、単なるわがままなのではなく、世界への深い愛情の裏返しなのかもしれませんね。

教室で取り上げたニュースや、子どもたちの学びの様子をブログでご紹介しています。ぜひご覧ください。

2025/09/10 Category | blog 



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