受験直前期、ケアレスミスの正体は「不注意」ではありません
冬の足音が聞こえ、中学入試本番まで残り50日を切るこの時期。親御さんの心には、焦りと不安が入り混じった冷たい風が吹いているかもしれませんね。
先週末、小6中学受験生のご家庭を対象にした「中学受験オンラインセミナー:フォロー会11月」を開催しました。そこで、話題に上ったのが「ケアレスミス」。
過去問の結果を見て、「どうしてこんな簡単な問題を間違えるの?」「もっと気をつけなさい」と、つい声を荒らげてしまった経験はありませんか。でも、不思議なことに、いくら「気をつけよう」と誓っても、ミスはなくならない。なぜなら、そのミスは、お子さんのやる気や注意力の問題ではないからです。
それは、脳の「システムエラー」なんです。
強いプレッシャーがかかると、人間の脳はサバイバルモードに入ります。視野がキュッと狭くなり、正確さよりも処理速度を優先してしまう。これを心理学で「トンネル視野(トンネルビジョン)」と呼びます。否定語の「〜ではない」を見落としたり、条件を読み飛ばしたりするのは、お子さんが悪いのではなく、脳が特定の条件下で引き起こす、予測可能なエラーなんですね。
システムのエラーに対して、「根性」や「精神論」で対抗しようとしても、それは少し難しい話だと思いませんか。
必要なのは、脳の暴走を止めるための「物理的なアクション」です。
たとえば、指差し確認をする。問題文の重要な言葉をぐるぐると丸で囲む。計算式の数字を指で押さえる。私たちはこれを「マーキング」と呼んでいます。頭の中で処理しようとするからエラーが起きる。だから、手を動かし、視覚に訴え、身体を使って脳に「ここは大事だよ」と強制的に認識させるのです。
「気をつけて」と祈る代わりに、「指を置いてごらん」と伝えてみる。
ほんの少しのアプローチの違いですが、これが結果を大きく左右します。お子さんを叱る必要なんて、本当はどこにもないのかもしれません。
そして、この直前期に親御さんができる最大の貢献。それは、家庭の中に「安定」を作り出すことです。新しい参考書を買ったり、特別なことをしたりする必要はありません。いつもの時間に起き、いつものご飯を食べ、淡々とルーティンをこなす。
親御さんのどっしりとした「安定」こそが、トンネルに入りかけたお子さんの視野を、優しく広げてあげる光になるはずです。
ここまで走り続けてこれたこと自体が、実は奇跡のような素晴らしい成果なんですよ。その奇跡を信じて、残りの日々を、ただ淡々と、美しく過ごしてみるのはいかがでしょうか。
2025/11/27 Category | blog
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