【12/16付】意見を育てるニュース教室:「クマ被害」と「政治」を熱く語る12歳たち。そこに見た、受験の先を生き抜く「太い幹」
受験本番まで、あとわずか。日々、お子さんの背中を見守る親御さんの心にも、期待と不安が入り混じる時期ではないでしょうか。
そんな張り詰めた空気の中で、ふと私の手元に届いた一通のメール。それは、「意見を育てるニュース教室」での、6年生たちの最後の授業の記録でした。
読み進めるうちに、目頭が熱くなるのを感じました。そこには、点数や偏差値という物差しだけでは測れない、たくましく成長した「小さな哲学者たち」の姿があったからです。
この教室では、その年の重大ニュースをテーマに扱います。大切にしているのは「何が起きたか」を覚えることではなく、「なぜ、それが心に残ったのか」を自分の言葉で語ること。
例えば、「クマ被害」のニュース。Yくんは「最初は遠くの出来事だったのが、日本中で起こり、身近に危険を感じている」と語り、Tさんは「叔父が近くの茶畑で見かけた」と、身近なリアリティとして捉えていました。社会問題を「どこか遠くの国の話」ではなく、「自分たちの足元にある危機」として感知するアンテナ。その感性の鋭さに驚かされます。
また、政治のニュースに目を向けたTさんやTくん。「女性初の首相」というトピックに対し、「常識を覆した」「発言が流行語になった」と時代の変化を感じ取りつつ、外交への不安も口にします。彼らはもう、大人が思う以上に、この社会の行く末を真剣に見つめているのです。
報告書の中で特に私が心を打たれたのは、彼らの「所感」の変化です。
「以前は文章にできなかったが、構成を整えて書けるようになった」と振り返るTさん。「アメリカ軍基地の是非」という難しいテーマで、自分とは違う意見に触れ、視野が広がったと語るTさん。
そして、Kさんのこの言葉。「友だちと意見を共有することで、新たな考えが浮かび、それを自分の意見として発表できるようになった」
これこそが、私たちが目指す「学び」の本質ではないでしょうか。受験勉強は、ともすれば一人で机に向かう孤独な戦いだと思われがちです。しかし、本当の知性とは、他者との対話の中で磨かれるもの。「自分では思いつかなかった発想があることに気づかされた」というTくんの言葉は、まさにその真理を突いています。
いま、お子さんの成績のことで、一喜一憂してしまう日もあるかもしれません。「この子は、これからの激動の時代を生き抜いていけるのだろうか」と、ふと不安がよぎる夜もあるでしょう。
けれど、どうか安心してください。お子さんたちは、大人が用意した「正解」をなぞるだけでなく、正解のない問いに対して、自分なりの答えを探し始めています。
「稼ぐ力」や「賢さ」の土台となるのは、こうした他者の意見を聞き入れ、自分の頭で考え、言葉にする力――つまり、太くしなやかな「幹」のような主体性です。ニュース教室での彼らの姿は、まさにその「幹」が育ち、枝葉を広げようとしている瞬間でした。
私たち大人がすべきことは、彼らに答えを先回りして教えることではなく、彼らが安心して意見を戦わせ、時に迷い、時に納得できる「土壌」であり続けることなのかもしれません。
教室の片隅で、熱っぽく語り合う彼らの横顔を見ていると、ふとそんなことを思うのです。彼らが切り拓く未来は、きっと私たちが想像するよりも、ずっと鮮やかで、頼もしいものになるはずです。
今夜、少しだけ勉強の手を休めて、ニュースについて話してみませんか?
「あなたはどう思う?」
その一言から返ってくる言葉に、驚くような成長の芽が、すでに顔を出しているかもしれません。

2025/12/17 Category | blog
