令和8年度静大附属浜松中入試の志願倍率上がる 「18の椅子」と、安定を捨てる勇気
今年の浜松の中学入試戦線、少し風向きが変わったのを感じています。
浜松西高中等部の志願倍率が過去最低の2.17倍となった一方で、静大附属浜松中の男子入試には、静かですが、これまでになく熱い視線が注がれているようです。
附属中の男子外部募集枠は、わずか18名です。
普通に考えれば、足がすくむような狭き門です。しかも、附属中には高校がありません。15歳になれば、再び高校受験という荒波に揉まれることになる。6年間の「安定」が約束された西高という選択肢がありながら、なぜあえて、茨の道を選ぶご家庭が増えているのでしょうか。
おそらく、多くの親御さんが気づき始めているのだと思います。
「安定」というぬるま湯よりも、荒波の中でこそ、我が子の「個」が磨かれるという事実に。
リスクを取らなければ、現状維持すらままならない時代です。
かつての附属中の入試といえば、計算の速さや正確さが問われるものでした。しかし今は違います。答えのない問いに向き合い、論理的に考え、自分の言葉で表現する力が求められています。
それはまさに、これからの社会を生き抜くための「地頭」そのものです。
計算ドリルをマシーンのように解くことよりも、泥臭く試行錯誤することを楽しむ。そんな男子の「野性」とも言える知的好奇心を満たす場所として、附属中が再評価されているのかもしれません。
「面倒くさいことは放っておくと、雪だるま式に増えていく」と、私はよく教室で子どもたちに話します。
今のうちに楽をすれば、あとでそのツケを払うのはお子さん自身です。
逆に、今のうちに「自分の頭で考える」という、一見すると面倒で苦しいプロセスを経ておけば、それは一生消えない財産になります。
西高か、附属か。
それは単なる学校選びではなく、お子さんにどんな人生を歩んでほしいかという、親としての「覚悟」の選択なのかもしれません。
高校受験がない6年間を穏やかに過ごす幸せもあるでしょう。
けれど、3年後の高校受験で、地域トップの浜松北高を目指し、さらなる高みへ挑戦する権利を、今の段階で手放してしまっていいのか。
その迷いの中で、「かわいい子には旅をさせよ」とばかりに背中を押せる親御さんが増えていることは、とても頼もしく思えます。
受験はゴールではありません。
大切なのは、どこの学校に入るかよりも、その過程で「自分で決め、自分で挑んだ」という経験を、どれだけ積ませてあげられるかではないでしょうか。
お子さんの机に向かう背中を見て、ふと思います。
その小さな背中に、どれだけの自由と、どれだけの責任を背負わせてあげられるか。
私たち大人が試されているのは、まさにその「信じる力」なのかもしれません。
18という数字の向こう側に、どんな景色を思い描きますか。
一度、立ち止まって考えてみるのも、悪くないかもしれませんね。
2025/12/19 Category | blog
