「頑張れ」と言う代わりに。子どもが勝手に動き出す「最初の一手」と、親ができる見守り方
ラボの始まりは、いつもこう。
中3受験生たちが教室の最前列に陣取り、慣れた手つきで「集中」のための耳栓をはめる。
そして、タイマーのボタンに指をかける。
「ピッ」
その電子音が教室の空気を裂いた瞬間、彼らは一斉に、超集中という名の深い海へとダイビングしていくのです。
冬期講習『冬ラボ』。その二日間の光景は、まさに圧巻でした。
そこにあるのは、誰かに強制された「やらされる勉強」の重苦しさではありません。
自らスイッチを入れ、自分の意志で深海へと潜っていく、潔いまでの「覚悟」です。
彼らはもう知っているのです。
やる気が出るのを待っていても、その波は決して来ないことを。
だからこそ、タイマーや耳栓という物理的な「仕組み」を使って、自分の脳を強制的にトップギアに入れる。
「はじめの5分」に全力を注げば、あとは勝手に体が動き出すことを、体感として理解しているのです。
ある生徒のノートを覗き込んだときのこと。
真っ赤に染まったページを前に、彼は悔しがるどころか、どこか楽しげですらありました。
バツがついた問題こそが、自分の伸びしろ。
失敗を「ダメなこと」と捉えるのではなく、「現状の自分を知るための貴重なデータ」として冷静に受け止めている証拠です。
「きれいなノート」を作る自己満足な時間はもう終わり。
泥臭く解き直し、脳に汗をかく時間こそが、自分を合格へと押し上げる5。
そんな声が聞こえてきそうなほど、彼らの背中は雄弁でした。
私たち大人は、つい子どものことを心配するあまり、
「もっと気合を入れなさい」
「集中力が足りないんじゃないの?」
と、精神論で励ましてしまいがちです。
けれど、目の前の彼らを見て思うのです。
必要なのは、親の熱い檄(げき)ではなく、子どもが自らアクセルを踏めるような環境と、少しの信頼なのかもしれません。
自分の人生のハンドルを、自分で握り始めた子どもたち。
その横顔は、親御さんが知っている「守られるべき我が子」から、一人の自立した「学習者」へと、確かに脱皮しようとしています。
冬の静寂の中、響くのは鉛筆の音と、ページをめくる音だけ。
けれど、その静けさの中には、マグマのような熱い意志が渦巻いている。
この二日間で見せた彼らの変化は、決して一過性のものではありません。
「勉強の常識」を疑い、自分だけの「勝ち方」を見つけようともがいた経験は、受験という枠を超え、彼らの一生の財産になっていくはずです。
親御さん。
今日、塾から帰ってきたお子さんの顔を、どうかまっすぐに見てあげてください。
疲れているけれど、どこか誇らしげなその表情に、彼らの確かな成長の物語が刻まれているはずですから。
残り数日。
彼らがどこまで深く潜り、どんな景色を掴み取ってくるのか。
私はその一番近くで、彼らの挑戦を見守り続けたいと思います。
2025/12/25 Category | blog
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