【7/22付】意見を育てるニュース教室:うちの子は戦争を知らない~でも、それで本当にいいのでしょうか?
今週の小川先生の「意見を育てるニュース教室」で、胸が締め付けられるような出来事がありました。
読売中高生新聞の特集「戦争の花嫁」を扱った授業でのことです。授業を始める前に、小川先生が生徒たちに確認したそうです。
「戦争に関する実話について、身近な人から直接聞いた体験はありますか?」
答えは、皆無でした。
わずかに一人の生徒が原爆体験に関する本を読んだことがあるという程度。それ以外の生徒は、戦争を「遠い昔の出来事」として捉えているようでした。
小川先生は長崎出身で、中学時代の恩師が被爆者だったそうです。その恩師から聞いた体験談を織り交ぜながら授業を進めました。
特に、原爆投下直後の話には生徒たちも驚きを隠せなかったとのこと。爆心地では一万度という高熱にさらされ、人間が蒸発し、その影だけが壁に残る。そんな現実があったということを、初めて知ったのです。
この話を読んで、思い出したのは哲学者サンタヤーナの有名な言葉です。「過去を記憶しない者は、それを繰り返す運命にある」。
でも、記憶するためには、まず知らなければなりません。
先日、お母さんからこんな相談を受けました。「うちの祖父は戦争体験者なんですが、子どもに話すには重すぎて…。どう伝えればいいのでしょうか」
その時、今回のニュース教室の話を思い出しました。確かに戦争の話は重いテーマです。でも、だからこそ、今のうちに伝えておく必要があるのかもしれません。
今回の授業では、生徒たちが記事に線を引きながら、グループで答えを確認し合ったそうです。小川先生はあえて解答を説明せず、生徒同士で学び合うスタイルを取りました。
「講師がただ解答を解説するよりも、生徒同士で答えを確認することで、より学んだことが定着できた」と小川先生は振り返っています。
これは戦争体験の継承についても言えることかもしれません。大人が一方的に話すのではなく、子ども同士で話し合い、考え合うことで、より深く心に刻まれるのではないでしょうか。
興味深かったのは、課題の提出状況についての報告です。勉強時間と内容を正確に記録して提出する生徒は2割、課題作文の提出はほぼ100%。そして、記録をきちんと取れている生徒ほど、授業でも積極的で作文の質も高いという傾向が見られたそうです。
これは、記録することの大切さを示しています。戦争体験についても同じです。おじいちゃん、おばあちゃんから聞いた話を、子どもなりに記録しておく。それが、いつか大切な財産になるかもしれません。
「うちの子に戦争の話をするのは、まだ早いかもしれない」と思う親御さんもいるでしょう。でも、戦争体験者の方々が高齢になり、直接話を聞ける機会は確実に減っています。
今度、お子さんとおじいちゃん、おばあちゃんと会う機会があったら、「昔はどんな時代だった?」「子どもの頃の思い出は?」と聞いてみてください。戦争の話でなくても構いません。その時代を生きた人の言葉は、きっとお子さんの心に何かを残してくれるはずです。
過去を知ることは、未来を考えることでもあります。子どもたちが平和な世界を築いていくために、今私たちができることを考えてみませんか。

2025/07/23 Category | blog
