テストの結果で子どもを叱ってしまった…。そんな自分に落ち込むお母さん、お父さんへ

テストの結果を見て、わが子を前に、今まで出したこともないような声で怒鳴ってしまった。そんな自分に驚き、そして激しく落ち込む…。そんな夜を過ごしたことはありませんか。

「お子さんのため」と信じているはずなのに、心の中は罪悪感と自己嫌悪の嵐。愛しているからこそ、期待しているからこそ、どうしてこんなにも怒りの感情が湧き上がってくるのでしょうか。その感情の正体は、一体何なのでしょう。

先日、あるお母さんから、切実なご相談を受けました。 「塾のテストの結果を見るたびに、夫が子どもを激しく叱責するんです。人格を否定するような言葉を投げつけることもあります。それを見ているのが、本当につらい。息子がどんどん萎縮していくのがわかるんです…」

そのお話をお聴きしながら、私は胸が締めつけられるような思いでした。きっと、同じような痛みを抱えているご家庭は、決して少なくないはずです。

私たちは皆、頭ではわかっています。叱責が、お子さんの学習意欲を育むための最善の方法ではないことを。むしろ、押してはいけない「ボタン」であることさえ、知っているはずなのです。

それでも、私たちはそのボタンを押してしまう。

なぜなのでしょう。

少しだけ、立ち止まって考えてみませんか。その燃え上がるような感情は、本当に「今、目の前にいるお子さん」だけに向けられたものでしょうか。もしかしたら、その怒りの根っこには、お父さん、お母さんご自身が、かつて子どもだった頃に経験した「痛み」や、「満たされなかった想い」が隠れているのかもしれません。

私が「世代間ギャップ」と呼んでいるものです。

お父さん、お母さんが生きてきた時代と、今のお子さんが生きる時代とでは、社会の価値観も、求められる力も、幸せの形さえも大きく異なっています。ご自身が「こうしなかったから苦労した」「こうすれば成功できた」と信じてきた道のりが、必ずしもお子さんの未来を照らす唯一の光ではないのかもしれない。

厳しい言葉で叱責してしまうお父さんの心の中。そこには、「自分と同じ辛い思いを、この子にだけはさせたくない」という、不器用で、けれど切実な愛情が、叫び声となって隠れているのではないでしょうか。

もし、ご主人が感情をぶつけてしまう「怒り」の役割を担っているのであれば、お母さんはその穴を埋めるように、お子さんを「承認」する役割を担ってあげてほしいのです。ご夫婦そろって叱責してしまっては、お子さんには逃げ場がありません。

そして、もし心に余裕があれば、お子さんにそっと「翻訳」して伝えてあげてほしいのです。

「お父さんはね、昔、勉強ですごく悔しい思いをしたことがあるんだって。だから、あなたにはそんな思いをしてほしくない、って気持ちが、ちょっと強すぎるのかもしれないね。あなたのことが、大切でたまらないんだよ」

この一言が、お父さんとお子さんの間にできてしまった固い氷を、少しずつ溶かしていくきっかけになることがあります。お子さんは、「自分にはわからない、お父さんとお母さんの世界があるんだ」と感じ取ることで、父親の怒りを真正面から受け止めずに済むようになるのです。

そもそも、お子さんが「もっと知りたい」「できるようになりたい」と心から思う、そのエネルギーの源泉(原動力)はどこにあるのでしょう。

それは、昨日まで解けなかった問題が解けるようになった、ほんの小さな喜び。知らなかった漢字を一つ覚えて、世界が少しだけ広がったような感覚。

そして何より、「すごいね!」「そんなこともできるようになったの?お母さん、嬉しいな!」と、その小さな成長を、家族が一緒になって驚き、喜んでくれる、あの温かい瞬間ではないでしょうか。

私たちは、気づかぬうちに、自分の過去の物語の脚本を、お子さんに手渡してしまうことがあります。

一度、その脚本を手放してみませんか。

そして、目の前で始まろうとしている、お子さん自身のまったく新しい物語を、ただ静かに見つめてみませんか。親の役割は、その物語の主人公になることではなく、嵐の日にいつでも帰ってこられる、安全な港でいること。そして、誰よりも熱心な最高の応援者でいることなのかもしれません。

お子さんの未来は、あなたの過去の延長線上にはないのですから。


2025/08/23 Category | blog 



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