浜松西高中等部入試 作文の鍵はお子さんの12年間に。家族で始める「想い出探し」としてのネタ帳づくり
浜松西高中等部の作文で、毎年多くのお子さんを悩ませる問題があります。
「あなたの体験を交えて、意見を書きなさい」
この一文を前に、鉛筆を握りしめたまま、頭が真っ白になってしまう。
「特別な体験なんて、何もしてこなかった…」
そう呟くお子さんの不安そうな顔を見て、胸が痛むお父さん、お母さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
安心してください。これは、ほとんどのお子さんがぶつかる壁です。そして、その壁を乗り越えるための、とっておきの「隠し玉」があるのです。
それが、「ネタ帳」づくりです。
「ネタ帳」と聞くと、なんだか難しそうに聞こえるかもしれませんね。でも、やることはとてもシンプル。お子さんがこれまでの12年間の人生で、心を揺さぶられた瞬間を、一緒に探しにいく冒険に出るようなものです。
「体験がない」のではなく、「気づいていない」だけ
まず、一番にお伝えしたいこと。それは、お子さんに「特別な体験がない」なんてことは、決してないということです。
6年間続けたサッカーの練習で、泥だらけになったユニフォーム。発表会で、緊張しながらも最後まで弾ききったピアノの音色。キッチンで一緒に作った、少しだけ焦げてしまったクッキーの甘い香り。
その一つひとつが、他の誰にも真似できない、お子さんだけの輝く「宝物」です。ただ、日常の中に溶け込んでしまっていて、その輝きに気づいていないだけなのです。
「ネタ帳」づくりは、その宝物を一つひとつ丁寧に取り出して、磨き上げていく作業に似ています。
心の引き出しを整理しよう
では、どうやってその宝物を探し出すのか。
その手掛かりとなる言葉は「喜怒哀楽」です。
- 嬉しかったこと:試合で初めてレギュラーに選ばれた時、どんな気持ちだった?
- 悔しかったこと:コンクールで賞を逃した夜、お母さんに何て言った?
- 怒りを感じたこと:理不尽なことで、友達とぶつかってしまった時のこと。
- 楽しかったこと:家族旅行で見た、あの満点の星空。
こんな風に、感情を手がかりにして、記憶の引き出しを一つずつ開けていきます。
大切なのは、単に「悔しかった」で終わらせないこと。
その時の情景を、ありありと思い出すのです。
コーチの怒鳴り声、雨でぬかるんだグラウンドの匂い、お母さんが握ってくれた手の温かさ。五感をフル活用して、その瞬間にタイムスリップしてみましょう。お子さんの言葉だけでなく、周りの人たちの様子や、その場の空気感まで書き出してみる。そうすることで、単なる思い出が、読む人の心を揺さぶる「物語」に変わっていきます。
家族だからできること
お子さん一人では、忘れてしまっていることもたくさんあるはずです。
そんな時こそ、ご家族の出番です。古いアルバムを引っ張り出して、「この時、こんなことがあったよね」と話してみてください。写真一枚から、忘れていた記憶が色鮮やかによみがえってくることがあります。
週末のひととき、家族で「ネタ帳」づくりをしてみませんか。
それは、単なる受験対策の時間を超えて、お子さんがどれだけ愛され、豊かな時間を過ごしてきたかを再確認できる、かけがえのない家族の時間になるはずです。
作文試験で求められているのは、誰もが驚くような派手な体験談ではありません。
ありふれた日常の中で、お子さんが何を感じ、何を考え、どう成長してきたのか。その「心の軌跡」です。
「ネタ帳」は、その軌跡を記した、世界でたった一冊の参考書。
そして、本番で不安になった時、お子さんの背中をそっと押してくれる、最強のお守りになります。
さあ、一緒にお子さんだけの物語を、紡いでいきませんか。
2025/09/01 Category | blog
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